こんな日は喫茶店でモカ。

海炭市叙景」(佐藤泰志著)読みました〜(報告)。


近所の喫茶店に「佐藤泰志作品集」が置いてあって、モカを飲みながら、少しずつ読ませてもらっていました。


「すずめ君、これは売り物なんだけどね。後で買ってくれると嬉しいな」
「はい、そのつもりで読んでいます」


……と、私はいい返事で答える。
けれど、もしかしたら買わないかも知れない。

買うと言って結局買わなかったり、小説を読んでいると、そういうやりとりを結構粋にこなしているものだ。
だからといって、買わないと決めているわけでもない。
買うかも知れない。
そこがミソ。
うーん。小説的だな〜。


と浸っている場合ではない。


全部で18のエピソード群からなる作品とのこと。
勿論、私は18のエピソードをそれぞれ覚えていない。覚えていたり、覚えていなかったりする。それもまた小説的なのだ。
ちなみに、産業道路を律儀にも50km/hで走っている車がどうしても許せなくて、無理矢理追い越したらパトカーにつかまった……というようなエピソードが切なかった。
何事につけても、等身大の物語だった。


当時はあと一歩のところで脚光を浴びそこねたようだけれど、もしかしたら今の時代の空気感にはぴったりあうかも知れない。


ただちょっと、悲哀感の方がやや強いかな。
個人的には、この街は、悲喜こもごもだと思うんだけど、それがちょうどイーブンな感じで表現されているのがいいんじゃないだろうか。


ねえ、どう思う――?


と、そこから先の展開は、自分の中でも構築できないことはない。
もう少しで、何か、光明を見いだすことができそうな気もしないでもない時がある。
しかし、所詮は独り言ワールドなので、だんだん興味が違う方向へと移っていく。


例えば、
頭皮のケアをするのに、手持ちの精油をどういう風に組み合わせようか……。
とか、そんなことを考え始める。まさに煩悩無量の境地。
さて、そもそも乾燥しているのか、脂っぽいのかがよくわからない。
ただちょっと炎症気味。
サンダルウッドとシダーウッドを使ってみようか。


サンダルウッドがなかなかぽたぽた落ちてこないのだ。
佐藤泰志なら、なかなかぽたぽた落ちてこないサンダルウッドをただ単に描写するだろう。
何かの心情を代弁しているわけでもないのだ。