「文章のみがき方」の前に「文章の書き方」という本が出ているので、せっかくだからそれも読んでおこうと思った。本屋に行くと、300ナンバーの中では唯一ぴかぴかの増刷版で並んでいる。この手の本はよく売れているらしい。
 実際読んでみると、名文鑑賞ノートみたいな感じ……かな。
 かゆいところに手が届かない。
 でも、いいことも書いてある。

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「芸もないのに適当に悪口をいう。そうすると、文章を書いたみたいな気になれますからね。……今の人に悪口は書けても、いいラブレターは書けない。いいラブレターを書くには、自分を見さだめるのと、対象を見さだめるのと、自分と対象との間に関係があって、その関係がどういう意味を持つかということを把握して、しかもそれに希望的観測をつけ加えるっていうことをしなくちゃいけない。書けないでしょうね」
(P98)

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ここでいう、ラブレターというのは、明治の時代の教養人が日本を一等国にしようと張り切っている様子であり、文章には伝えたい想いがこもっていて、つまりは国民に対するラブレターである、というような意味のことを書いている。
私も希望的観測を少しでも持てるように、また1からの気持ちで努力していく。

「文章の書き方」
(辰農和男,岩波新書,ISBN4-00-430328-1)