それは恋の歌

夢、
夢を見ていた……。


目の前で血まみれの男が倒れていた。
共に戦った同志である。
その姿、顔かたちは、まるで私そのものだった。
その時、私は私ではない誰かの目で、私を見ていた。


「お前……、松前の桜ぁ、見たことあるか?」
「あるよー。南殿でしょー、糸括でしょー。雨宿もいいよねー」
「……」
「す、すみません」
「そうか、桜といったらソメイヨシノしか知らない。普通はそうだよな」
「はい」
「桜はソメイヨシノだけだと思ったら大間違いだぜ」
「はい」
「綺麗だぞ。250種類、1万本の桜が咲く。植物学者の叡智のたまものサ。早咲きの桜、遅咲きの桜、色々ある。1ヶ月に渡って次々に咲くんだ。いつ見ても、何度見ても、決して飽きることはない」
「はい……」
「この戦いが終わったら」
「はい。私も一度、松前の桜、見に行きたいです」
「そうだな。この戦いが終わったらな。一緒に松前に行こう」
「はいっ(いい返事)」
松前に行ったらな。昼はおくむらの五目ラーメンを食うんだよ。勿論オレのおごりでな。いいんだ、たまにはオレにも格好つけさせてくれ。味噌五目でもいいし、しょう油五目でもいい。あれは……、絶品……、だ……」(がくりっ)
「ちょっ、えっ、サージェント? ちょっと突然っ? サージェントォォォォおおおっ!」


という、悲しい夢だった。
ただ、戦いというのが、どんな戦いなのかまでは、よくわからなかった。


それはさておき。


夢、
夢を見ていた……。


ピピピピピ。
着信1件。


「すずめさん、松前行ってきたんですか?^ω^」
「うん。行ってきただ(-.-)」
「おひとりでですか?^ω^」
「うん、ひ……。いや、ふ……。じゃなくて、いっぱい(-.-)☆」
「それは良かったですね^ω^」


私はその時、それ以上、何も伝えてあげることができなかった。
またしても、淡泊なメールのやりとりだけをして終わってしまった。


という、寂しい夢だった。
ただ、メールの先の相手が美少女なのかどうかまでは、よくわからなかった。


それは冗談として。


朝、6時に松前に到着して。本格的に動き出す9時までに若干時間があったので、車の中でだらだらとレム睡眠とノンレム睡眠を交互に繰り返していたのだった。


上記はその時のせめてもの思考活動の記録である。


「彼女いなくても空想で時間つぶせるから、彼女なんていらないなあ(強がり)」


そういう問題ではない。


てなわけで、松前神社で「恋みくじ」を引いてきた。私はそういうのに興味はないんだけど、ツレが引きたがるので、仕方なく引かせてやった(またしても空想入る)。


ツレ「兄者、オレの名前はツレでいいんスカ?」
すずめ「とりあえず、名無しよりはマシだろうと思って。所詮、会話形式でブログ書くための方便だからさ」
ツレ「ひどいなあ。ま、敬語で言うなら、おツレさま、だったりして、色々イメージのふくらむ素敵な名前ですかねっ?」
すずめ「それは何かヤダな。違う名前にするか」
ツレ「何でもいいですよwktk。ちなみwktkっていうのはワクテカの略ですよ、兄者!」
すずめ「そもそもワクテカの意味がわからんし。じゃあ、とりあえず、某T氏(ぉ」
某T氏「そんな、陰口に使うみたいな名前はイヤですよ。しかも、(ぉとか言って、時代錯誤もはなはだしい! 老害って言われても仕方ありませんよっ」
すずめ「すまんかった。ワシも老いた。無駄に歳はとりたくないもんだ」
ツレ「(気を取り直して)兄者、恋みくじ、引きました〜っ」
すずめ「ふん。で、何と出た? 破らないように丁寧に開いて読んでみろ」
ツレ「う、うううっ」
すずめ「何だどうした? うなっているだけじゃ、わからんぞ?」
ツレ「兄者、兄者よぉ。オレ、オレ、字が読めねえ。何て書いてあるか、わからないんだよう。おおおおおおう(号泣)」
すずめ「おいおい、泣くな。字が読めない設定だったとは不憫な奴よ。どれ、引きたくて引いたわけじゃないが、私が読んでやろう」


でもって、読んでみた。
恋みくじ。
何か、こう、ときめく言葉が綴られてるかな?
ときめきって、最初に言い出したのは誰なのかしら(意味不明)?
せーの(自分で自分を無視)!
どんっ。
……こ、これはっ。

ぷるぷるぷる(←高橋留美子漫画風擬音、これもまた老害の証)。
すずめ「むむう。要するにこれか。いよいよこの駄文に満ちたブログもクライマックスだな」
ツレ「兄者、何て書いてあったんスカ?」
すずめ「うむ。これはな、誰にでも読めるが、決して、誰にでも読めるわけじゃない文章。つまりはこれは、暗号文さ」
ツレ「な、なんと!」
すずめ「これは古い文章だ。幕末から明治初期にかけての匂いがするな。うむ。まさにこれは箱館戦争の頃のものだろう。えっへん」
ツレ「どうりで、字が読めねえオレが、読めねえわけだ」
すずめ「まあ、そうさの。で、おそらくこれは私が推測するに、時の官軍の司令官黒田清隆が、本道の松前藩士に送った通信。内容は<官軍の上陸近し、準備して待機せよ。上陸予定地はオトベである。本道の解放は近い>という意味だろう」
ツレ「上陸作戦の暗号文!」
すずめ「確証はないが、おそらくそうだろう。えっへん」
ツレ「それにしても、これが中吉だとするならば、凶とか大凶とかはもっとひどいことになっているんでしょうね」
すずめ「話を戻さないで欲しかったなぁ。いや、多分、これは周回遅れの中吉であって、実際には大凶よりもひどいような気がするよ」
ツレ「(タンバリンを叩きながら)さっ。次は何を歌うのかなっ」
すずめ「お前、いい奴だな……」
……というわけで、普段は大抵のおみくじは持って帰るのだけれど、さすがに結んで帰ってきた。


  ☆


かくして、長い長い1日が終わった。
とどのつまり。
そう――。
おみくじ引いたら中吉だった。ただ、それだけの出来事だったのさ。


おわり!
(何が?)
(GWが!)